故Stephen Jay Gouldの「ワンダフルライフ」でバーチェス頁岩のことを、また、カンブリア紀の生物の大発生を知りました。それは生物進化に対する玉手箱であり、新しい世界を見せてくれました。
このカンブリア紀の生物大発生について、「眼の誕生」という本でアンドリュー・パーカーが面白い学説を唱えています。他に「スノーボール・アース 」なども同じ問題に言及していますが、「眼の誕生」は説得力があり、素晴らしくおもしろい本でした。5億4300万年前は現在よりも太陽光線が30%くらい少なかったそうです。その後、海中が澄み渡り、紫外線にネガティブに反応する細胞が窪み、眼という感覚器官を持ったところから捕食者と被捕食者の戦いが始まります。我々が現在存在するのは、最も優秀な知覚能力である眼と神経細胞を持つからに他なりません。
この写真は14年前くらいに日本デザインコミッティー主催のデザインフォーラム出品のためのデザインです。師匠がお亡くなりになられて直ぐのデザインフォーラムでした。当時も遺伝子や生物進化に強く興味があり、自然にこんな変なパターンをデザインしてしまいました。
このところ勤め先で「自然からの啓示」という課題を出しています。自然の話、知覚の話、眼の話、神経の話など少しだけ致します。先日、女子学生があまり感心しないモチーフを持参して「何故、このモチーフは描いてはいけないのですか」という質問を致しました。それは社会的にも文化的にも取り扱いが難しいモチーフでした。作品として本の中で成立するものと、公共の視線にさらされるものはいくらかの配慮は必要かとも思います。色っぽさも内臓まで見せては、何ともはやという心境なのです。「デザインというものは、かなり違いますよ」と申し上げましたが、複雑な心境ではありました。
眼という優秀な知覚能力を身につけたがための不幸は、何でも見えると錯覚することであり、分かると勘違いすることかも知れません。疑いを持っただけ,その女学生はまともなのかも知れません。