テキスト
寒波の中、東京郊外の美大で教えた後、いつものようにバス停でぼんやりしていたら目の前に、すっかり葉を落として針金のように細く、でもしなやかに強靭に、両手を空に広げるかのように、名も知れぬ木が二本立っているのに初めて気づいた。その何という美しさ。これはまるで「生きる」形だ。木の形のなかに、 また形がある!
そして、私は思ったのだ。この感動は、木の葉に電流を流して細胞を感光させ、木がそれまで浴びてきた光を見ようとした山本渉の、葉が星雲でもあるような作品のそれに似ていると。
本江邦夫
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One cold day, I had finished teaching in my class at Art University in the suburb of Tokyo, and I was vacantly waiting at the bus stop as usual, when I noticed two trees standing in front of me. I had no idea what species they were. While the leaves had already fell off and the bare trunks looked like thin wires, they were still growing there strongly with branches spread toward the sky. What the beautiful scene it was! They stood there showing the shape of tree and also revealing the shape of life.
All of sudden I figured out what Wataru Yamamoto had tried in his work: an electric current runs through a chain of cells of plants and exposes them to light to have a look at the sunlight pouring over the tree. His work on leaf reminds me of galaxy shape and touches my heart.
Kunio Motoe
山本 渉 Wataru Yamamoto
1986年 栃木県生まれ。
人と自然の境界に揺らぎを与える写真作品を制作している。
写真を撮るという行為の根源的な欲望や身体性、技術的展開に関心がある。
多摩美術大学大学院 在学中
— 主な展示イベント —
2006:福岡国際らん展
2008:「さよなら ポラロイド」展(東京)
2009:「さよなら ポラロイド」展(京都)
2009:新宿眼科画廊「写真の時間」展
2010:横浜美術館アートギャラリー「126POLAROID さよならからの出会い」展
出版物・・・『126 POLAROID さよならからの出会い』(赤々舍)
2010:那須の芸術祭「スペクタクル・イン・ザ・ファーム」(天才算数塾より参加)
2011:大木裕之主催アートイベント「たまたま9.0(ネオキュビスム、ネオハイブリッド)」 2011:浅草橋天才算数塾「方法的対峙的」
2011:シャトー2F「まだパラダイス」(voppivoppiというグループとして展示)
2011:SPACE/ANNEXギャラリー「森と人/葉と電力」
2011:東京都写真美術館「キヤノン写真新世紀2011」展